2017年の新語・流行語大賞では、“睡眠負債”がランクインして、今や睡眠不足の悪影響や良質な睡眠環境に対する関心が高まっています。
睡眠不足の生活が長く続くと、身体に蓄積した疲れや自律神経の乱れが原因となって、睡眠障害を招きかねません。熟睡するのが難しい生活環境を見直して、ぐっすり眠るためにはどうしたらいいのでしょうか?
快眠のためにぜひ取り入れたい習慣と、熟睡を妨げるNG習慣を取り上げてご紹介していきます。
熟睡している睡眠状態とは?
人の意識レベルは、脳波の状態によっていくつかに分類されています。
脳の活動レベルが高いほど脳波の周波数の高い速波が多く、脳の活動レベルが下がって熟睡していくにつれて周波数の低い徐波という波が多くなります。この脳波の変化に伴って、身体にもいろいろな変化が現れます。
熟睡している脳の状態
脳波の中でも、睡眠時に限って出現する特徴的な脳波があり、睡眠紡錘波(sleep spindle)といいます。この脳波が出現し始めると、睡眠状態に入ったと判断されます。
科学的に解説すると?
脳波がデルタ波といわれる状態になり、デルタ波の周波数が2Hz以下になって連続して出現すると、徐波睡眠(slow wave sleep:SWS)といわれる最も深い睡眠状態に。
この状態が最も熟睡している睡眠状態になります。
熟睡している身体の状態
熟睡している時の身体は、レム睡眠といわれる眠りの浅い状態から、ノンレム睡眠と呼ばれる深い睡眠モードの睡眠状態に変化しています。
呼吸法も規則正しい胸式呼吸に変化して、多少の物音がしても気づかず眠り続けるため、大声を上げたり体を揺さぶったりするなどの強い刺激がないと目覚めません。
熟睡できる習慣を身につけよう!
日光を浴びる
太陽の光は体内時計のリセットと、睡眠リズムの調節に欠かせません。
太陽光を朝15分程度浴びると、体内にセロトニンという物質の分泌が促されます。日光を浴びないとメラトニンの原料になるセロトニンが十分に作れないので、夜になってもなかなか寝付けなくなります。
朝食を食べて心と身体のスイッチをONにする
朝食を食べないことが睡眠の質に関係するという研究でも、朝食を食べない頻度が上がるほど、睡眠の質が低下する傾向があると発表されました。
朝食を食べない人ほど、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒や不眠まで不調を訴える割合が多いとされています。
朝食を食べるとは睡眠リズムを整えることにつながる
睡眠ホルモンのメラトニンのもととなるセロトニンは、目から入る光の刺激で作られるだけでなく、腸管でも作られています。消化・吸収のリズムを整えることは、睡眠リズムを整えることにもつながります。
適度な運動
日中に適度な運動をすると昼間の覚醒を促して、睡眠と覚醒のリズムを安定させます。
適度な疲労感は熟睡に大切な要素
特に、年齢を重ねていくにつれて増える夜間睡眠中の中途覚醒の訴えは、昼間の活動不足からくる適度な疲労感の欠如である場合が多いので、運動で熟睡に必要な活動量を補うのが効果的です。
睡眠時無呼吸症候群の予防にも
睡眠時に息の通りが悪くなって呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群という病気。
これは、体重過多や肥満で睡眠時に気道(喉の空気の通り道)が狭くなると発症したり、重症化したりします。睡眠時無呼吸症候群を予防するには、肥満を防ぐことが大切で、そのためにも運動が勧められます。
運動がセロトニンの分泌を促す
歩行やダンスなどのリズミカルな運動には、セロトニンの分泌を促す効果もあります。運動習慣を熟睡のためにぜひ取り入れましょう。
寝る前には室内の明るさを弱めて強い光刺激を避ける
明るい室内照明は、入眠のための睡眠物質の分泌を抑制します。
熟睡するためには、できるだけ寝る2~3時間前から室内の明るさを低下させていき、睡眠ホルモンの分泌を促進させましょう。
ブルーライトを回避しよう!
寝る前のスマホチェックやPCでの作業は、快眠に逆行する行為。
これらの光源のLEDには、覚醒を促すホルモン分泌を活発にさせる青色光(ブルーライト)が多く含まれているため、目からこれらの光の刺激を受けると、熟睡できなくなってしまいます。スマホやPCの光は寝る1時間前からは浴びないようにしましょう。
眠れない時にはむしろ遅寝・早起きを
夜の眠りが浅く、夜中に何度も目が覚めるのは、自分にとって必要な睡眠時間よりも長い時間を寝床の中で過ごしている可能性があります。
「寝床に入るのは眠くなってから。起床時間は遅らせない」という方法で、無理して眠ろうとする努力や眠りに対する不安・恐れを取り除くことも、不眠を習慣化させない睡眠法となります。
熟睡できる環境について知る!
寝室の温度や湿度、明るさや音、寝具や枕など、就寝中の睡眠環境は睡眠の質に関係しています。
特に成長期にある子供たちは、睡眠中に成長ホルモンが分泌されるので、睡眠環境を整えるのは大切なこと。
では、どのような環境が睡眠に適しているのでしょうか?
睡眠の環境について解説
熟睡できる睡眠環境については、こちらの記事で詳しく解説しています。
睡眠環境はとても重要なので、是非ご参照ください。
寝相が悪い原因は睡眠環境の寝苦しさから?対策方法と病気の可能性
コレはNG!熟睡を妨げる要素とは?
激しい運動
過激な運動をすると疲労感で眠りにつきやすいと考えがちですが、かえって睡眠を妨げる原因になります。熟睡するためには、心や身体に過剰なストレスや疲れがない状態がベスト。
自分に合った運動強度の軽めの体操を選ぶようにしてください。
熱すぎる入浴
睡眠の深さと体温の変化は密接に関係しています。
就寝する30分前から6時間前までの入浴で体温を上げておくと、入眠促進や深い睡眠時間を増加させる効果があります。40℃程度の温湯の入浴は、質の高い睡眠を得る睡眠法にもなります。
適度な入浴を心がけよう
入浴が熟睡のための睡眠法になるのは、適切な時間に適温を守った場合です。熱いお湯が好きな人は、就寝前は控えておきましょう。
カフェイン摂取
カフェインの覚醒作用や利尿作用は、睡眠の質を低下させて熟睡を妨げてしまいます。
カフェインを含む食品の摂取は就寝時間の3~4時間前までにとどめ、スムーズな眠りを妨げないようにしてくださいね。カフェインが含まれるものは、コーヒー・緑茶・紅茶・ココア・栄養ドリンクなどが挙げられます。
睡眠薬代わりの飲酒
寝付きをよくしようと寝酒を飲む習慣のある方もいるかもしれません。
日本人は諸外国に比べて寝酒の頻度が高いことがわかっています。飲酒直後には眠気が強くなり付きが良くなるように感じられるからです。しかし、飲酒すると睡眠前半のレム睡眠が減少して浅いノンレム睡眠が増加し、睡眠時間の減少が起こることが確認されています。
アルコールの力を借りて熟睡はできない、飲酒は熟睡のための方法ではないことを覚えておきましょう。
少しの工夫で熟睡できる!
睡眠は毎日繰り返す行為ですが、人が心と身体の健康を保ち、仕事や学校など社会で活躍するためにはおろそかにできないもの。
睡眠の質は、毎日の小さな習慣で低下することもあれば、改善することもできます。
ここで取り上げた方法を活用して、熟睡できる睡眠環境作りをしてみてくださいね!